EXHIBITION

ARTIST

曳野真帆 Maho Hikino
郷愁

ガラスのグラスを大量にテグスで吊り、水を入れ、少しの塩と時計の部品を沈め、映像を投影するビデオインスタレーション。
グラスは常にゆらゆらと揺れて、映像の光を反射し、影を落とし、歪ませ、煌めかせる。
水に沈めた時計は、壊れ、染み付いていた手垢で水を濁らし、会期中徐々に錆びていく。
ビデオというデジタルメディアの永久的な再生と、吊るされたグラスにおける一過性の現象が重なり合う。
これは記憶と世界への思考である。
私の居るこの場所は、無限でも永遠でもない。
我々の時間は、位置は、感情は、常に流れ続け、本来はその一瞬も掴み取ることはできない。過去と未来の狭間にある現在は、いつも曖昧である。
しかし僅かな共通項が、源流となり、私は身体に血を通わせることができる。それが世界との無限の繋がりの始まりである。
世界のほとんどのことを私は知らない。
そのうち私は居なくなるだろう。それでも、私は透明な入れ物で世界を掬いとる。
曖昧な記録、にじみ揺らぐ視界、居場所の無さ、全ての喪失、終わりのない鎮魂。それらが繋がり、新たに生まれ直す柔らかな世界は、常に溢れ出している。

タイトルの「郷愁」は、私の大叔父にあたるシュルレアリストの画家・浅原清隆(1915-1945)が、1938年(昭和13年)に描いたペインティングと同じタイトルである。

※「郷愁」浅原清隆、昭和14年 油彩・キャンバス・額・1面・東京国立近代美術館所蔵

協力:ガラス工房ブンタロウ

展示会場

大宜味村立旧塩屋小学校

PROFILE

  • 曳野真帆 Maho Hikino

    1985年 兵庫県生まれ。2008年 同志社女子大学情報メディア学科卒業、2010年 多摩美術大学院情報芸術コース修了。ビデオインスタレーション、アートプロジェクトなどを制作。質感、感覚、感情といった記憶を、再生し再構築する試みを行う。
    2013年-2015年 NYにて制作活動を行い、同年NYをベースに日本人アーティストコレクティブ"ART BEASTIES"を立ち上げ、主宰として運営。
    主な展示として、2020年"ART BEASTIES @ Cornish College of the Arts : Art Incubator Residency" Alhadeff Studio(シアトル)、2019年"不在が存在する" OFS Gallery(個展、白金五丁目アワードファイナリスト)、2018年"Time Difference 時差 vol.3 New York-Seattle‒London‒Tokyo" 東京都美術館(都美セレクション選出)、2016年"Time Difference 時差 vol.2 New York-Seattle-Tokyo-Kobe" 兵庫県立美術館など、国内外問わず展覧会を行う。

    Photo by Tokio Kuniyoshi

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